論述を可能にする「序論、本論、結論」の形式
多くの人は「序論、本論、結論」という形式を知っていても、これらをうまく活用できません。それどころか、形式を守ろうとするばかり、ぎこちない文章になってしまいます。
ただ、「序論、本論、結論」という形式は、本来レポートを書きやすくするものであり、論述の必須要素でもあります。
論述とはレポートにおける議論です。
議論に「議題」や「論点」があるのと同じように、レポートは最初に「テーマ」と「問い」を決めます。また、議論では根拠がある者同士の対話を重ねて議決を出すのと同じように、レポートでは「テキスト理解→考察」という流れでテキストと対話を行い、結論を導きます。
このような論述を可能にするレポートの形式が、「序論、本論、結論」なのです。
このページでは、「序論、本論、結論」の形式と論述の関係について、具体例を挙げて説明します。
論述における序論の役割
「善を巡る教育について自由に論じなさい。」というレポート課題には、具体的な論点が載っていません。そのため、自分自身でレポート課題を解釈し、レポートの方向性を決める必要があります。
これを行うのが序論です。
序論では、「何について論じるか」「何を解決するか」という2点を考えます。
まず、「善を巡る教育について自由に論じなさい。」という課題は漠然としているので、論じる範囲を限定する必要があります。
例えば、「善を巡る教育問題とその解決について」というテーマでは、述べる内容は善と教育の関係に限定されるので、かなり書きやすくなります。
このようにテーマを設定により、レポートで論じる範囲を限定することができます。
続いて、具体的な論点を定めます。これは、問いを置くことで自然と決まります。
例えば、「人を善くする教育とはどのようなものか?」という問いを設定すれば、善という概念に対する教育観についてテキスト内容をまとめ、両者の矛盾点や相補性という論点について論じられます。
このように問いを設置することで、本論の方向性が決まり、結論を導くことができるのです。
論述における本論の役割
本論では、客観的で説得力ある議論を行います。誰が見ても納得する議論には、根拠がある者同士の対話が必須です。
つまり、「テキスト理解→考察」という流れで文章を展開し、自分の意見を一方的に述べるのではなく、テキストとの間で双方向のコミュニケーションを取りながら結論を導くのです。
この点について、先ほどの「人を善くする教育とはどのようなものか?」という問いを例に解説します。
論述の流れは「テキスト理解→考察」なので、まずは善という概念に対する教育観についてテキスト内容をまとめ、その後両者の矛盾点や相補性について考察を加えます。
その際、「節」を用意してください。
説明項目や考察内容ごとに節を立て、段階的に結論に迫ります。
今回の場合、「教育と善の関係」「善を認めない教育観」「善を認める教育観」「考察」と節立てします。これらは問題解決のスモールステップなので、節を進めるごとに結論に迫ることができるのです。
このように本論はレポートの中心なので、4000字レポートの場合は全体で3500字程度にすると良いでしょう。
論述における結論の役割
結論について間違えて解釈している人が多くいますが、結論は「感想」や「あとがき」ではありません。また、単なる「まとめ段落」とも違います。
結論の目的は、レポート全体の答えを示し、議論を終わらせることです。
つまり、序論で立てた問いに答えを出し、文字通り「結論」とする必要があります。そのためには、序論と結論は必ず対応関係になっており、序論の「Q」に対する端的な「A」がないといけません。
そこで、序論の「人を善くする教育とはどのようなものか?」という問いに対し、次のように答えを出します。
「はじめに、「教育とは何か」によって教育のあるべき理念を定める。次に「どう教育するか」によって子どもの善への欲求に可能な限り関連した課題を与える。そうして善へのより高次な欲求を生じさせたら、第一の問いに戻るのである。このような絶え間ない円環が、人を善くすることができる教育の在り方であると結論付ける。」
答えを出した後は、Q&A形式でピックアップして、序論との対応関係を確認しましょう。
Q:人を善くする教育とはどのようなものだろうか。
A:はじめに、「教育とは何か」によって教育のあるべき理念を定める。次に「どう教育するか」によって子どもの善への欲求に可能な限り関連した課題を与える。そうして善へのより高次な欲求を生じさせたら、第一の問いに戻るのである。このような絶え間ない円環が、人を善くすることができる教育の在り方であると結論付ける。
このように確認することで、問いに対する端的な答えであることが分かります。序論と結論がきちんと対応しているので、レポートを終わらせることができるのです。
このように結論ではレポート全体の答えを示すので、正しく理解し、論述の仕上げとしてください。
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